共感と想像をひらく創造の営み

はじめに
創造とは、ただ何かを「生み出す」だけでなく、曖昧な感性を形にして共有していくプロセスでもあるのかもしれません。
朝山絵美氏が提唱する「タンジブル化」は、その営みを理論として照らし出しています。
一方で、筆者が考える「示唆的タンジブル」は、あえて未完にとどめることで想像力をひらこうとする試みです。
二つの視点は異なる方向を向きながらも重なり合い、そこに「形にすることの魅力」が見えてくるように思います。
タンジブル化とは何か
タンジブル化とは、無形の感性やビジョンを具体的なかたちへ翻訳していく行為と考えられます。
組織においては、抽象的なビジョンを共有可能にし、合意形成を促す助けとなるでしょう。
芸術やデザインにおいては、手の感覚や素材の触感を通じて、美意識を外化する契機にもなります。
「トリハダ美」と呼ばれる感覚、つまり言葉にできない震えが、形を通して他者と共鳴することがある。そこに、タンジブル化の魅力の一端を見ることができます。
示唆的タンジブルとの重なり
筆者の考える「示唆的タンジブル」は、形を与えながらもあえて未完にとどめる点に特徴があります。
断片は問いかけとなり、受け手の想像力を誘い出します。
不完全さは欠陥ではなく、むしろ想像を羽ばたかせる余白となり、新しい意味がそこから立ち上がることもあるでしょう。
タンジブル化の魅力は「形を通じて共感が生まれていくこと」。
示唆的タンジブルの魅力は「形を通じて想像が広がっていくこと」。
両者を並べてみると、創造とは「形にする」と「形をひらく」という二重性をもつのだと見えてきます。
実例に見る魅力
創造の営みは、領域を越えて共通する部分があるようです。
椅子職人は、自らの体験をもとに「座り心地」という感性を椅子の形に映し出します。
画家は、自らの感動を「色と構図」という形にのせて表現します。
執筆家は、言葉を並べながら「感情の余白」を読者に開きます。
いずれも「形にする」ことを通じて感性を共有し、同時に想像を誘っている。これもまた、タンジブル化の魅力に通じる営みではないでしょうか。
結びにかえて
形は、感性を閉じ込める器ではなく、響き合いを生むきっかけとなるもの。
形にすることで感性は他者と交わり、余白を残すことで想像は未来へとひらかれていく。
朝山絵美氏のタンジブル化と、筆者の示唆的タンジブルは、その二つの道筋を互いに照らし合っているように思います。
共感を育むタンジブル化と、想像を広げる示唆的タンジブル。
異なる方向を持ちながらも、二つは創造の営みの中で重なり合います。
では、あなたにとって「形にすること」とは、どのような意味を持つでしょうか。
参考文献:
- 朝山絵美「future_creator|創造性を深める」note https://note.com/future_creator
- 朝山絵美 ポートフォリオサイト https://emiasayama.com/
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