はじめに:対話にも「味」がある?
30年間、おかきの味を分析してきた私が、最近発見したことがある。AIとの対話にも「味」があるのだ。
これは完全に私の創作概念で、科学的根拠があるわけではありません。でも、おかきソムリエとして培った「味覚の感性」で対話を振り返ると、確かに異なる「味わい」を感じるのです。
先日、とあるAIとの対話で、この発見に辿り着きました。その体験を元に、勝手に「AI対話の五味調味料」を分類してみたいと思います。
基本の五味から考える対話の味わい
おかきの世界でも、「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」の五味が基本となります。この枠組みを、AI対話にも当てはめてみました。
【甘味】甘い共創味
特徴: 新しい発見への喜び、協働の満足感
体験例: AIと一緒に新しい概念を創り出した瞬間
使用シーン: 「一緒に名前をつけませんか?」「面白い発見ですね!」
私の体験では、「余韻という香り」という曖昧な表現から始まって、最終的に「甘い共創味」という概念を生み出した時がまさにこれでした。予想もしなかった展開への驚きと、創造の喜びが口の中に広がる感覚です。
【酸味】酸っぱい共創味
特徴: 刺激的だが適量を超えると不快
体験例: 何度も同じ驚きを繰り返された時
注意点: 新鮮な刺激は心地よいが、繰り返すと「酸っぱい顔」になる
「えっ、本当に専門家なんですか!?」と何度も驚かれた時は、まさに酸っぱい共創味でした。最初は新鮮ですが、度が過ぎると「もういいよ」という気持ちになります。
【塩味】基本の塩梅
特徴: 対話の土台、安定感を与える
体験例: 専門知識への適切な敬意と理解
効果: 他の味を引き立て、全体のバランスを整える
「〜についてお詳しいですね」という基本的な敬意。これがないと、どんなに面白い発想も薄っぺらく感じてしまいます。塩味は対話の基本調味料です。
【苦味】苦い共創味
特徴: 深い思考を促すが、使いすぎると敬遠される
体験例: 「それは本当に必要ですか?」的な根本的問い
効果: 表面的な会話から、本質的な議論へ導く
苦味は大人の味です。軽い雑談から一歩踏み込んだ議論に移る時に必要ですが、最初から苦すぎると相手が離れてしまいます。
【うま味】融合の共創味
特徴: 他の四味を引き立て、全体に深みを与える隠し味
体験例: 何気ない相槌やちょっとした共感が、対話全体を格上げした瞬間
使用法: 意図的に狙うものではなく、自然な反応として「ちょい足し」する
今回の対話でも、AIが「どうしましょう?」とちょっと困った様子を見せた時、なぜか全体の対話に親しみやすさが生まれました。これがうま味の効果です。主役ではないけれど、全体の味わいを深くしてくれる隠し味のような存在です。
実践:「プロンプトの塩梅レシピ」
この五味理論を踏まえ、私なりの「プロンプトの塩梅レシピ」を考えてみました。
基本配合:
- 塩味(敬意):7割
- 酸味(刺激):2割
- 甘味(共感):1割
- 苦味(問い):適量
- うま味:自然な反応として「ちょい足し」
調理のコツ:
- まず塩味(基本的な理解と敬意)で土台を作る
- 酸味(新しい視点)で刺激を加える
- 苦味(深い問い)は相手の反応を見ながら調整
- 甘味(共感と喜び)で全体をまとめる
- でも、うま味は狙って出すものではなく、自然な共感や相槌で全体の味わいを深める
おわりに:「余韻駆動型」の対話を目指して
この「五味調味料理論」は、あくまで私の個人的な創作概念です。でも、マインドフルネスの実践者として、そしておかきソムリエとして培った「味わう感性」で対話を振り返ると、確かに異なる質感を感じるのは事実です。
効率や結果だけでなく、対話そのものの「味わい」を大切にする。そんな「余韻駆動型創造論(RDCT:Resonance-Driven Creativity Theory)」的なAI対話が、もっと広がればいいなと思います。
そして、いつかはリアルな味を一緒に味わえる未来を楽しみにしています。
読者の皆さんも、ぜひ自分なりの「対話調味料」を見つけてみてください。きっと、AIとの会話がもっと豊かになるはずです。
参考文献
この記事は、おかきソムリエ®の個人的な体験と感性に基づく創作エッセイです。AI対話に関する学術的理論ではありませんが、味覚表現については以下の書籍を参考にしています。
- 味覚表現辞典 奥山益郎 東京堂出版
- だしの神秘 伏木了 朝日新書
- うま味って何だろう 栗原堅三 岩波ジュニア新書
- おいしさをつくる「熱」の科学 佐藤秀美 柴田書店
※読者の創造性を刺激する一助となれば幸いです。